横山和輝 日本史で学ぶ経済学 (雑読みでの雑感)

 

名古屋市立大の横山和輝(@ecohis)さんの新作「日本史で学ぶ経済学」が刊行されていた。前作「マーケット進化論」で多くを学んだので買ってみた。ざっとしか読んでないので誤解もあるだろうがとりあえず(あと、3章と7章なんとなく何も読んでない)。

 

本へのリンクはこちら。 

 

日本史で学ぶ経済学

 

・「はじめに-経済学のレンズで歴史を学ぶと、ビジネスのヒントが見えてくる」でご本人が本の魅力をとてもよく解説してるし、経済学と歴史をあわせて学ぶ意義のいい説明にもなっている...のでできればその部分を公開するといいと思うが、少しだけ引用するなら、

 

歴史は「取引のあり方や値段の決まり方を切り口として、人間がどのような行動をとるのか」を探るヒントの宝庫なのです。過去の出来事と現代の問題との間を経済学を通じて結びつけて考えることができる、ここに歴史で学ぶ面白さがあります。

 

と書かれている通り、横山さんが「過去の出来事と現代の問題との間を経済学を通じて結びつけて考えたこと」(のたくさんのうち自信がある部分)とその考え方を示してくれている。

 

・経済学か歴史のどちらかの興味・知識があれば興味深く読める本だと思う。「一見無関係なことが実は密接につながっている」と書いてあるようにフリマアプリやショッピングモールといった現代のプラットフォーム・ビジネスと楽市楽座の共通点といった、単語は聞いたことがあるものが経済学のロジックで共通点が見出せることがわかるのは楽しい。というか、中高時代単語だけ覚えたものに意味づけが与えられるのはなんか得した気がする。

 

蛇足1 1章はそれぞれの内容は貨幣の本質に関わる話でとても面白かったが、読者の知識、先入観が人によって全然違うと思われる暗号通貨の話に結びつけるのがよかったのかよくわからない。

 

蛇足2 楽天の名前の由来は楽市楽座なんだからプラットフォームの経済学の専門家をチーフエコノミストとして雇っても楽市楽座の研究用ファンドを作ってもいいのでは。

 

よくあるご質問|楽天株式会社

 

・学習・教育面では、例えば金融を勉強してる時に金融制度の解説を読む時・する時などで「第4章 銀行危機の経済学」をあわせて読むと金融危機を防ぐ仕組みがどのような経験に基いて作られてきたか、それらがなかったときにどのように危機を悪化したかがわかってより理解が深まるかもしれない(最近金融論の教科書を読んでないので、実は最近の教科書ではそういう工夫がすでになされているかもしれない)。

 

・人に働いてもらったり、何かの集まりを組織したり、何かの仕組みを改革したり、したふりをする必要がある際に参考になる...のかはわからないが参考にする材料が増えるとはいえそうだ。そういう参考材料としての歴史事例を読んで考えることの、同時代のそういうテーマ(組織改革や人材管理)の教科書や成功失敗事例集を勉強することに対するメリットは何だろうとちょっと考えて見た。歴史事例だと長期的な結果がわかってる、利害関係がないから冷静に見れる、背景が違う分自分が当然と思ってた、または変えられないと思ってた要因の変化を見ることができる、あたりだろうか。もちろん背景が違う分、直接参考にならない部分は大きいという欠点はあるがそれは長所と表裏一体の関係だから仕方ないのだろう。何が違って何が適用可能か、ということを理解するためには経済学的な思考の枠組みを身につけましょう、ということなのだろう。

 

・5章の徳川吉宗の改革だが、紀州時代の側近の登用、また幕僚機構の分割による各人の担当範囲の限定化が効果があったとされているが、それぞれ潜在的には短所もありえそうに思える。前者は側近の知識不足、権力乱用とか、後者は担当範囲間の連絡の欠如による非効率さとか。それらの方策の長所>短所が成立している状況だったことが補足してあればよかったかもしれない。似たような印象を少し2章の最初に持った。まあ、これは多くの事例、トピックをカバーする関係上仕方なかったのかもしれない。これらのトピックでもっと深く分析できると思った人は組織の経済学の本などに進めばいいように思う。

 

 

 ・じっくり読み直したい章もあるので、また何か書くかも。