NBER Summer Institute 2017
2017年のNBER Summer Instituteに7月下旬参加したときの雑感。開発経済学、環境経済学、都市経済学をうろつきまわった。都市経済学セッションで報告。
あとで分割、まとめ直すかも。
Dell&Olken オランダがインドネシア統治時代に作った製糖工場の長期的効果。製糖工場が作られた地域の近くは類似環境地域の近くに比べて経済発展。インフラ整備と川下産業への波及のためか。植民地収奪目的の事業でも悪影響とは限らないと。https://t.co/PdcZUpj9ev
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
植民地事業の長期的影響でもどんな形でなされてきたかで影響が違うという研究が最近蓄積してきているようだ。鉱山、農場、収集系では負(Dell, 2010 EMAやコンゴの天然ゴムhttps://t.co/eknq64XksQ)な一方で(続く)、
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
メキシコのコチニール染料(何だか知らない教養のない人はggrks. 私も知らなかったけど。旧植民地からスペインへの輸出で銀に次ぐ量だったらしい)生産地はそれが生産されなくなった現在も貧困率が低いというS. Jhaの研究があり(続)https://t.co/Qs5PIx3u3X
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
コチニール生産の場合は植民者が学習、モニターしづらい先住民の技術と努力が必要だったため、かつ同じ理由で英仏が他国への移植に成功せずにスペインが独占したため、先住民に高いインセンティブを与えて搾取的なことをしなかった、と議論されてる。(続)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
以上の両極端と比べるとインドネシア製糖業はどちらかというと負の要因が多くでそうな方だと思うがそれでも正の影響ということは、製造業+インフラ整備といった条件が整えば正の影響が起こり得るのか、それとも説明されてない背景情報が重要なのか。(製糖工場での労働力供出の背景は多く質問でてた)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
そういえばトランプと面会したCEOの企業の株が上がるというニュースがあったが、では「だから」トランプが経済にいい影響、とはならないように、今回の研究もオランダ植民地政策があったうえで、そのある側面に強く影響された方が経済成長面で正の影響という話で植民地政策そのものの是非は字数
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
Startz ナイジェリアの輸入商の取引データおよび輸入の際に売り手の国に行くかどうかのデータから輸入のサーチコスト(行かないと扱ってるものが流行から遅れる)と契約コスト(行かないと契約履行確保のために高価格を払う必要あり)を推定。 https://t.co/R5MdVAMFAu
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
似たような働きをする2つのコストパラメータを分離する意味が?とまではいわないが、どう分離してるかはよくわからなかったので後で見るとして、そういう情報・契約コストがあると物理的貿易障壁が下がった時に情報・契約コストが下がってその効果を拡大するチャネルは重要でもっと研究されるべき。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
Heblich 他 "East Side Story.." 英国で古くに工業化した都市は今も都市内東側が「悪い」地域らしいが、工業化の際に風下で汚染物質が飛んでくる地域とそうでない地域に貧困層/富裕層がソートしたのが固定された結果と。https://t.co/ZdqyCgkdfP
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
環境のセッションは今日はあとはEgg-timerセッション(5分の報告×12個)に行ったが、去年も全員4分30-50秒以内に終わらせてたが今年も1人を除いて全員時間内に終わらせてた。high-stakeな場所だとお前らやればできるんだなと(なぜか謎の上から目線)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
その中で面白かったのでかつ論文がネットにあるものとしては、Zou 米国で6日に1回大気汚染をモニターする政策(?)を行ったら、その日だけ大気汚染の量が減りましたとさ、という研究(5分しか聞いてないので間違ってるかも、後で読む) https://t.co/svUs59nhf2 pic.twitter.com/bs7TZChBxi
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
Frank 珍しい動物(の製品?)の需要は希少であればあるほど高まるので絶滅危惧種指定されたら貿易が増えましたとさ、という研究。(5分ry) https://t.co/uAQnFwyk8I pic.twitter.com/guL90xwByd
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
Goldsmith-Pinkham 他 Bartik Instruments: What, When, Why, and How https://t.co/zBrmxRx4Wc
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
この操作変数で何となく理解してたことを定式化してくれた感じ。提案は私の知ってる文脈では微妙なのもあるが
夕方は開発に戻り、Blattman 他 コロンビア首都ボゴタで警察と組んだ(ボゴタ市現警察トップは麻薬組織の経済学業界で有名な経済学者)犯罪頻発地域重点パトロールの大規模RCT。窃盗などはパトロール外地域で起こるようになり純効果小。 https://t.co/9E1z9781SA
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
randomization inferenceを応用してて、犯罪に限らず、都市政策全体で近隣スピルオーバー効果がある時のRCTでかつスピルオーバーが及ばなさそうな地域を考えるのが現実的でないような状況をどう扱えばいいかに関して手法的にも参考になると思う。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月24日
Grossman/Slusky 最近のミシガンFlintの水道水鉛汚染の出生への影響。出生数減、出生体重は頑健な結果なし、女児の割合増、行動変化の証拠なしと。 https://t.co/X6SSyEEplB
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月25日
ざっくりした分析で潜在的競争者多そうだからつばつけました感ありすぎ。。
ミーティングが入って行けなかったが、Sullivan カリフォルニアの電力危機と環境政策で大気汚染が改善した地域で住宅価格が上がり貧困層が退出。https://t.co/JUkrLiWcOH
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月25日
昨日の英国の結果の結果とあわせて興味深い。
昨日の英国の結果で、貧困富裕層の地域が現在まで固定持続しているのはそれら都市がその後ぱっとしてないからではと討論者のグレーザーが言ってた。一昨日のDellの研究にも討論者のHornbeckが歴史要因の持続ってむしろその要因がどうでもいいから起こるのではと言ってたのとちょっと重なる
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月25日
Mobarak 他 ブラジルでの電化→農業生産性向上→機械集約的な農業増+放牧減→森林増加https://t.co/1RGjpXWkoR 農耕と放牧の代替性は信用制約から来てるらしいが何らかのキャパシティー制約でも大概出るはず。制約取って生産性向上したら森林減少する証拠はなし。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月25日
なお、報告者、討論者ともに開発セッションの常連参加者でもあったが、討論の後に報告者が討論者個人固定効果コントロールしても環境セッションの方がniceな場だと発言。わかる。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月25日
昨晩の特別レクチャー Better Data Communication https://t.co/sZSB9Rv5pj そのうち動画がアップされるはず。素晴らしいプレゼンだったが、内容がリンク先のJEP論文以上に役に立つかは微妙。JEP論文解説動画があれば一番役に立ちそう。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月26日
今日の特別講義 Large-scale Data Linkage https://t.co/UeJ1IBzW88 講義ビデオがそのうちアップロードされるはず。アウトラインはこんな感じ。何言ってるかが不明確というより何のためにそれを説明するのかが不明確ででついてくのきつかった。 pic.twitter.com/9u1LYi2j8S
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
こういう場でこういうスライドをだす機会は今後もうないだろうと思いやってやった。反省はしていない。めちゃくちゃ受けた。 pic.twitter.com/CGcmdkT2Fe
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
Shi 中国の不動産ブームに不動産業が必ずしも得意でないが参入の下で資金がある製造業企業が参入することによる資源配分の非効率性の研究。https://t.co/DpSLWfP3GA
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
前TWしたこともある、6000マイル閾値を使った直行便の経済効果の論文https://t.co/i1LJsn6DQj
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
プレゼンも素晴らしかった。
(続)僕も将来こういう論文書きたいですと思ってたが(小並感)、討論者のD.Davisがどんな航空会社の就航モデルを考えたら閾値前後で他の特徴もスムーズに変化するのかと疑問と反例を提示し、その点はR&RだけどQJEのレフェリーにも言われてるらしく世の中厳しいなあと(小並感)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
Nagy 数量的空間経済モデルに内生的成長を組み込んで空間的特徴や摩擦や交通インフラ整備の都市成長に与える動学的効果を分析https://t.co/PnYgJozazO (クリックするとダウンロードが始まるので注意)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
(続き)終始「私がレフェリーだったら」という口ぶりでかつその可能性を確信してる感じだったので、こんなテクニカルな論文レフェリー行くんだ、と思った。まあテクニカルな部分で批判ができなくても、新しい道具を持ち出した意義や背景理解は有意義なコメントはできそうであるがちょっと意外だった。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
Courture, Faber他 中国農村での電子商取引へのアクセスの生産面、消費面への効果の村落レベルRCT https://t.co/KYxl2KIYxp
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
生産者としての効果はなし、消費者としての効果は一部の人のみ(若者など)。
あまり研究がないトピックに大規模RCTによる効果推定と理論を組み合わせて厚生効果のチャネル分解までやったすごいプロジェクトだがRCTが1年しかやれなかった(しかも制約上長期的に続けられないぽい)から効果が小さかったというよりは効果の異質性を売りにした方がいいんでしょうねえ。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
直前にツイートした中国農村での電子商取引へのアクセスのともう1つ今回の都市経済ミーティングで感銘を受けたというか笑うしかなかった論文があったのだが、今論文見たら許可なく拡散するなと書いてあったのでそっちは自粛。ベースになった論文だけ次のツイートで紹介しよう。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
Bryan他 “Under-investment in a Profitable Technology: The Case of Seasonal Migration in Bangladesh,” エコノメトリカ¸ 2014. https://t.co/Sm2msmb4VG
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
収穫前の時期の栄養状態が悪化する途上国の現象に対し、バングラデシュで都市行のバスチケット(1000円くらい)をランダムに補助したら、その時期の都市への移動と消費が促進されかつ数年後も効果が持続したがそれはなぜか(効果が大きいならなぜそもそも自分でやってないのか)という論文で(続)
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
その効果の大きさを見て各NGO、政府、国際機関の政策化が検討、実現され、対象数や見るアウトカムを増やすプロジェクトが世界各国で進行中らしく、今回聞いたのはそのうちの1つで、村落・個人レベル両方でランダム化してスピルオーバーや一般均衡効果を見たという話だった。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月28日
今回の報告でもらったコメントをまとめた。「寿司食べたくなった」×2、「抽選は本当に漫画で知ったのか」×2 (答はyes)、「プログラムの最後の締めの報告としては最高だった」×2、「モデル書いて抽選の誘導系の結果使って構造推定しろ(大意)」byその場の大物ほぼ全員。世の中厳しい。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月29日
しかし、オーガナイザーのグレーザー先生は全報告に論文の方向や問題の見方、具体的な分析について建設的な助言をしてて、これLabOrで報告したら消し炭も残らないんじゃないかという報告にも(選んだのは誰かはおいといて)親身のコメントをしてて、分野を作る人というのは違うなと痛感した。
— K. Teshima 手島健介 (@tetteresearch) 2017年7月29日